
事業所が浸水・被災したときのごみは誰が処分?|倉敷市で平常時にできる備え
事業所が浸水や台風で被災したとき、使えなくなった商品・事務用品・備品のごみは誰が処分するのか。倉敷市の「倉敷市災害廃棄物処理計画」(令和8年3月改定)は、災害廃棄物は市が主体となって処理するとしたうえで、事業者が持っていた商品や事務用品などで被災により使えなくなったものは、「原則として事業者自らの責任において適正に処理する」と定めています(2026年9月時点)。
つまり事業所では、被災した後に「市がまとめて片付けてくれる」とは限りません。このコラムでは、倉敷市の計画が事業所のごみをどう扱っているかを整理したうえで、平常時のうちにできる備えを5つにまとめます。
事業所の災害ごみは誰が処分する?倉敷市の計画の考え方
倉敷市の計画では、事業所が被災して出たごみは原則として事業者が自分で処理します。市が処理する「災害廃棄物」として計画が挙げるのは、災害で家具や家電などの家財が廃棄物になったものや、損壊家屋等の解体で出るものなどです。
計画は、災害廃棄物は廃棄物処理法では一般廃棄物とされ、市町村等が第一義的に処理責任を負うため、市が主体的に処理を行うとしています。そのうえで、事業所から出るものについては次のように整理しています(出典:倉敷市「倉敷市災害廃棄物処理計画」(改定版)p.5(PDFの9ページ目))。
| 場面 | 計画での扱い |
|---|---|
| 被災して使えなくなった事務用品・商品、価値がなくなり出荷できなくなったもの | 原則として事業者自らの責任で処理 |
| 中小企業から出るもので、腐敗などにより市民の生活環境に悪影響を与えるおそれがあるもの | 市が災害廃棄物として処理する必要があると認めた場合に、市が処理を行う場合がある |
| 事業を再開するときに出るもの(被災した事業所の撤去に伴う廃棄物、敷地内に流入した土砂や流木など)と、再開後の事業活動で出るもの | 平時と同様、事業者自らの責任で処理 |
| 河川・道路・公共施設・事業所等から出る災害廃棄物 | 事業者および施設管理者が行うことを基本とする |
2段目は「市が処理を行う場合がある」という書き方です。当コラムの整理では、これは市が必要と判断したときの例外で、事業所が最初から当てにできる前提ではありません。被災後の片付けの段取りは、自社で組むつもりで考えておくのが安全です。
なお、壊れた建物そのものの解体について、計画は、原則として所有者の責任で行うものとしたうえで、国の特例で補助の対象となる場合などに、市が公費で解体・撤去を行う場合があるとしています。公費解体の申請書類には、建物の所有者が中小企業者の場合の書類も挙げられています。被災した建物の解体を考えるときは、その災害で公費解体などの制度が設けられているかを、市の案内で確認してください。
被災しても、ごみの区分の考え方は残る
事業所から出るごみには、事業系一般廃棄物と産業廃棄物があります。廃プラスチック類・金属くず・ガラスくずは、業種を問わず産業廃棄物です。浸水で濡れた書類や段ボールと、水没したプラスチック製の備品や金属製の棚とでは、頼める許可業者が分かれることがあります。倉敷市の計画も、有害性・危険性のある廃棄物のうち産業廃棄物に当たるものは、事業者の責任で処理することを原則としています。医療機関や介護施設などから出る感染性廃棄物は、ふだんから特別管理廃棄物として他のごみと分け、扱える許可を持つ業者に委託するものです。浸水で容器が壊れても、他のごみに混ぜないでください。区分の基本は事業系一般廃棄物と産業廃棄物の違いで解説しています。
倉敷市で備えておきたい理由|平成30年7月豪雨の経験
倉敷市は、平成30年7月豪雨で大量の災害ごみの処理を経験した自治体です。市は、真備町の水害で約1,200ヘクタールが浸水し、約5,600世帯の家屋が被害に遭ったこと、浸水で出た大量のごみが道路や空き地に積み上げられ、復旧・復興の大きな足かせになったことを公表しています(倉敷市「災害廃棄物の出し方」)。
市はこの被災経験をもとに「市民版 災害廃棄物処理ハンドブック」を作成し、平時からの備えを呼びかけています。災害時のごみの出し方を平時から知ってもらうための「大きな災害時のごみの出し方」も公開しています。いずれも主に家庭向けの資料ですが、災害時のごみがどう集まり、どこで混乱が起きたのかを知るうえで事業所にも参考になります。
被災直後、事業所のごみはどう扱う?
片付けに入る前に、まず安全を確かめてください。電気の保安団体(九州電気保安協会など)は、壊れたり水につかったりした電気機器は使わず、電気店などで点検してから使うこと、ガスのにおいがするときは電気を使わずにガス栓を閉め、窓を開けて換気し、ガス会社に連絡することを呼びかけています。
家庭向けの仮置場やごみステーションに事業所のものを出してよいかどうかは、災害ごとに市が知らせる内容で確認します。事業所のごみは原則として事業者自らが処理するため、委託先で扱えるものは委託先と段取りを進めます。
倉敷市は、大規模な災害が起きた場合、ごみの出し方や分別方法、仮置場の場所・受付時間を市のホームページで知らせる予定としています。あわせて、避難所や公民館などへのチラシの掲示・配布、ごみ分別アプリ「さんあ〜る」、広報車でも広報する予定です。家庭に対しては、市が方針を決めるまで焦らず自宅の敷地内で保管するよう呼びかけています。
事業所で急ぎたいのは、冷蔵庫・冷凍庫の中身や食材などの腐敗しやすいものです。倉敷市の計画は、被災した冷蔵庫などから出る食品を「腐敗性廃棄物」として挙げています。飲食店や食品を扱う店舗では、停電や浸水で傷んだ食品を誰にどう引き渡すかを、平常時に委託先と話しておくと慌てずに済みます。浸水した業務用の冷蔵庫・冷凍庫やエアコンそのものを廃棄するときは、フロン排出抑制法により、冷媒のフロン類を第一種フロン類充塡回収業者に引き渡す(または設備業者などに引き渡しを委託する)必要があります。なお、中小企業から出る腐敗しやすいごみは、市が必要と認めた場合に市が処理することもあるため、市の案内もあわせて確認してください。
平常時にできる事業所の備え5つ
被災後の片付けを自社で組む前提で、平常時にできる備えを5つにまとめました。どれも費用をかけずに始められるものです。
1. ハザードマップで事業所とごみ置き場の場所を確かめる
倉敷市は、洪水・土砂、高潮、津波、内水、ため池のハザードマップを公開しています(倉敷市「ハザードマップ」)。事業所の建物だけでなく、ごみ置き場や倉庫の位置も確かめておきましょう。浸水が想定される場所では、容器が流れ出したり、中身が散らばったりしないよう、置き場の位置やふたの固定を見直す余地があります。置き場づくりの基本は事業ゴミの保管場所・置き場づくりで気をつけることにまとめています。
2. 委託先の連絡先と「回収が止まったとき」の確認
災害時は、道路の通行止めや処理施設の被害で、ふだんどおりの収集が難しくなることがあります。倉敷市の計画も、発災直後から24時間までの業務として、廃棄物処理施設の被害状況や収集事業者の被害の把握を挙げています。委託先の電話番号や担当者名は、スマートフォンだけでなく紙にも控えておくと、停電や端末の故障のときに困りません。収集が止まったときの連絡の取り方や、再開までごみをどこに置いておくかも、平常時に委託先と確認しておくと安心です。回収が止まる期間の乗り切り方は年末年始・連休の事業ゴミの備えも参考になります。
3. 委託契約書を取り出せる場所に保管する
委託先・回収品目・契約者が分かる委託契約書は、被災後に委託先と話を進めるときの手がかりになります。原本は事業所に置いたままにせず、写しを別の場所にも保管しておくと安心です。契約書の記載事項は事業ゴミの委託契約書の書き方で解説しています。
4. 薬品・油・電池などの置き場所を一覧にしておく
倉敷市の計画は、消火器・ボンベ類・リチウムイオン電池などを処理困難物に、化学物質・医薬品類・農薬類などを危険物に挙げています。浸水するとこうしたものが他のごみに紛れ込み、片付けの際に分けにくくなります。事業所にある薬品・油・スプレー缶・電池などの種類と置き場所を一覧にしておくと、被災後の仕分けが進めやすくなります。置き場所を見直すときは、落下や転倒のしにくさ、混ぜると危険なものを離しておくことも含めて、製品の表示や販売元の案内を確認してください。
5. 在庫と備品の記録を残し、片付け前に写真を撮る
保険の請求や公的な手続きでは、被害の状況が分かる写真を求められることがあります。当コラムの整理では、片付けを始める前に、浸水した高さや傷んだ商品・備品を写真に残しておくのが安全です。平常時から在庫や主な備品の一覧をつくっておくと、何が使えなくなったのかを後から説明しやすくなります。
事業所の災害ごみでよくある質問
▶ 被災した商品は、市の仮置場に持ち込めますか?
倉敷市の計画では、事業所の商品や事務用品は原則として事業者自らの責任で処理するとされています。仮置場の場所や受け入れるものは災害ごとに市が知らせる予定なので、事業所のものを持ち込めるかは、その時の市の案内で確認してください。店舗兼住宅の場合、平常時も住まいから出るごみは家庭ごみ、店舗・事務所から出るごみは事業ごみに分かれます。被災したときも、住まいの家財と、店舗の商品や備品とでは扱いが分かれることがあるため、どちらに当たるか迷うものは市の案内で確認してください。
▶ ふだんの定期回収の業者に、被災したごみもまとめて頼めますか?
品目によります。事業系一般廃棄物に当たるものは、その市町村の一般廃棄物収集運搬業の許可業者に、産業廃棄物に当たるものは産業廃棄物収集運搬業の許可業者に委託します。災害時に受け付けられるかは、そのときの道路や処理施設の状況によって変わるため、委託先に品目と量を伝えて確認しましょう。事業系一般廃棄物であれば、事業者が自ら市の処理施設へ持ち込む方法もありますが、災害時に受け入れているかは市の案内で確認してください(産業廃棄物は、ふだんから倉敷市の処理施設では受け入れていません)。
▶ 敷地に流れ込んだ土砂や流木は、誰が片付けますか?
倉敷市の計画では、事業を再開するときに出る敷地内に流入した土砂や流木などは、平時と同様に事業者自らの責任で処理するとされています。量が多い場合の扱いは、市の案内や委託先に確認してください。
平常時の置き場と回収の見直しは、倉敷市の許可業者へ
一般廃棄物収集運搬業の許可は、原則として市町村ごとに必要です。他市の許可や実績があっても、それだけでは倉敷市の事業系一般廃棄物の収集運搬を受託することはできません。産業廃棄物の許可だけでも、事業系一般廃棄物は扱えません(古紙など専ら再生利用の目的となるものだけを扱う場合や、市の委託を受けた場合などの例外があります)。
ファーストサービスは倉敷市の一般廃棄物収集運搬業と、岡山県の産業廃棄物収集運搬業の両方の許可を持っています(お引き受けできる品目はご相談ください)。倉敷市に特化した自社便ルートで事業ゴミの定期回収を行っており、回収の曜日や頻度、分別のご相談も承ります。平常時の定期回収について、品目と量(数・大きさ)をお知らせいただければ、回収の方法をご案内します。
